柳ヶ瀬情話 〜第五話〜

当店のお客様に、趣味で小説を書いてる方がいまして

三十数年柳ヶ瀬を飲み歩き、去年停年退職し

「小説書いたから読んで〜」と 時々持ってこられ

当人の了解を得て、ここに掲載させてもらいます。

 なお、あくまでフィクションですので、実在の個人名、会社名

団体、グループ名 等、一切関係ありません。



 柳ヶ瀬情話 第五話   著 関長下府生

     〜どうして今、値下げ?〜
  飲み屋街の路地裏に、昔風スナック「MATMAT」がある。

「おはよ〜」、ラウンジ「桂」の経営者GINちゃんだ。
聞いたか、林檎 店閉めるって、寂しくなるなぁ。
ウィードーも辞めちゃたし、薄化粧のママも引退したよなぁ。


「さすが情報が早いネェ、」
アーリータイムスのハイボール出しながら
感心する梅林だった。


スライスレモン口に含み、
彼の情報はまだ続く、「聞いたか〜」
GINちゃんの情報は「聞いたかぁ〜」から始まるのだ。
聞いたかぁ、太夢多夢が大幅値下げしたってヨ〜。


「えっ、太夢多夢、知ってますよその店。」
カウンターの真ん中でA&Aを舐めるように飲んでいた
天野さんが会話に入って来た。
「ここと同じで、昔っからやってる店ですよねぇ」


「アイス代を半額、ボトル代も下げたって
営業時間も17時開店に、変えたって」
あのマスター大丈夫かー。西柳ヶ瀬、すっごく暇なのに。


「大丈夫ですよ。」と天野さん
「太夢多夢は女の子使ってないし、子供も手離れて、
あの二人、もともと生活が質素だからね〜」


「頑張ってほしいよなぁ、むかし風のスナック
岐阜駅近くは居酒屋大繁盛だし、
柳ヶ瀬はラウンジ、
キャバクラ、高級クラブ、若いおねぇちゃん中心だし
お茶漬屋、スナックはどこ行きゃいいんだろうネ。」
マスター梅林も人ごとじゃない言い方だ。


二次会もいかなくなったし、
上司が誘っても平気で、断るってね。
お酒飲まない若い人多くなったみたい。


「そう、そう、飲めないじゃなく。飲まないらしいネ。」
仲間同士で行くカラオケボックスも、
ソフトドリンクで盛り上がるってね。


「酒飲まずにカラオケ、我々(おじん)には解んねぇや。」
突然携帯が鳴り、「いけねェ〜 チーママだ。
携帯もよし悪しだな。これも時代ってやつかぁ。」
GINちゃんバタバタと出ていくと、
MATMATはまた、静けさを取り戻した。


「梅ちゃん、閉店の時間だろ。
太夢多夢へ行くから、付き合わないか。」
「そうですね、僕もタム・マスに会いたかったから。」
おそらくGINちゃんも行ってるヨ。
「由紀美ママも行くでしょ。」
「当たり前でしょ!タム・ママ、友達ですよ。」
少し強い口調で言った。


「ちょっと天野さん、由紀美ママとタム・ママ。
酔ってしゃべると長いヨー。朝は覚悟したほうが・・・」
「えー、そうなんだ。」 
「聞こえてますよ。」
さっ!行きましょ。と、天野の腕をとる。
こんな元気なママ達が居るうちは、柳ヶ瀬、大丈夫だ。