柳ヶ瀬情話  〜第六話〜 

当店のお客様に、趣味で小説を書いてる方がいまして

三十数年柳ヶ瀬を飲み歩き、去年停年退職し

「小説書いたから読んで〜」と 時々持ってこられ

当人の了解を得て、ここに掲載させてもらいます。

 なお、あくまでフィクションですので、実在の個人名、会社名

団体、グループ名 等、一切関係ありません。

柳ヶ瀬情話 第六話  著 関長下府生

     〜気まぐれなお言葉〜

 飲み屋街の路地裏に、昔風スナック「MATMAT」がある。


「相変わらず、暇な店だなぁ。」
大熊さんが3人づれでご来店。
早い時間なのに酔っているみたいだ。
お連れさんも初めての方だ。


お酒を飲み比べる会があり、
純米酒だの三千盛だの山車、菊姫だの
会話は日本酒ことばかりであった。


突然、大熊さんが
「五国屋さん!会場このスナックでもおもしろいかも。」
「そうですねぇ、マスターどうでしょう。」
お願いしますと、名刺交換。酒屋さんだ。


 こういった話は良くあることで、途中たち消えになるはず、
だった。しかし、次の日十七時、会の概要、企画案等書いた
書類を渡されて、事の重大さに気付いたのです。
会場とお料理二千五百円で。
日本酒のおつまみ、口の肥えた方たちであろう。
どうしよう。


今更断ることもできず、大熊さんに恥をかかせぬよう。
儲け度外視のメニューとは言っても複雑なものはできない。
開催が十三時なので、当日は少しでも仕事を減らし、
前の日にできることは、やっておかないと。


メニューは、御刺身、飛騨牛のおろしポン酢
海老コンソメ煮タルタルソース添え、春菊の煮浸し
高野豆腐と野菜の炊き合わせ、蟹入りポテトサラダ
松前漬、口休めのクラッカー。酒屋さん提案のおでん、
最後におでんの汁で雑炊



 おでんはだいこん、たまご、こんにゃく、はんぺんを
市販のうどんつゆにて別々に煮て、シイタケの戻し汁、
酒、本みりん等、前日よりコトコト。


飛騨牛トミダヤにて5等級のしゃぶしゃぶ用を
うす味のだし汁にてしゃぶしゃぶして、
氷で冷たくなっただし汁に入れ冷蔵庫へ。


海老をコンソメで軽く煮て
いったん取り出しコンソメスープが冷たくなったら、
海老を戻します。
タルタルソースもどき?は、
ゆで卵、玉ねぎ、朝簀けの素に一日漬けた
キュウリ、ニンジンをピクルスの代わりに、
根気よくみじん切り みじん切り、
マヨネーズ塩コショウで混ぜてネッ!


春菊の煮びたし・春菊軽く茹でカツオだし、酒、みりん、
薄口しょうゆに浸し、
盛る時に糸がきカツオ節。
高野豆腐と野菜の炊き合わせに使った、
国内産の筍と干しシイタケ高いねェ〜ッ。


ポテトサラダにも一夜漬けのキュウリと人参入れると
おいしいよ。


松前漬け用のあたりめを、
キッチンばさみで細切りしてる時、
俺の人生これで良かったのかなって
思ったりするのはなぜだろう。
きぬさやの筋取ってる時もね。



 開催当日、二日酔いと闘いながら八時起き。
十三時に何とか間に合い、お客様を迎えました。
十数本の日本酒が並び、
五国屋さんが色々と説明したり紹介したり、
試飲が始まると場が和みざわざわとなり
普通の宴会となり。

三時間過ぎても飲み続ける女性四人
帰った男性軍が、好意で置いて行ったお酒で
二次会の始まりである。
そこへ、夜のお客さまも入ってくる。


カラオケも鳴り出す、マイクを持った美女。
「歌、無茶っ苦茶っうまいー」
一緒に盛り上がって飲んでる、五十代経営者夫婦の、
夜はまだまだ終わりそうにありません。