柳ヶ瀬情話  〜第四話〜

当店のお客様に、趣味で小説を書いてる方がいまして

三十数年柳ヶ瀬を飲み歩き、去年停年退職し

「小説書いたから読んで〜」と 時々持ってこられ

当人の了解を得て、ここに掲載させてもらいます。

 なお、あくまでフィクションですので、実在の個人名、会社名

団体、グループ名 等、一切関係ありません。



  柳ヶ瀬情話 第四話 著 関長下府生

   〜アニメとマンガ〜

 飲み屋街の路地裏に、昔風スナック「MATMAT」がある。

いつも早い時間は暇で・・・

 今日の「MATMAT」は違ってた。

若い女性が一人で座ってるのだ。

証券会社の営業マン高居鳴海さんが何度か連れて来た人だ。

彼の会社の成績はかなり良いらしい。

同僚に言わせると努力もあろうが、名前がいいと言う。

中学から大学まで「高鳴」と呼ばれていたが、

営業に配属されてからは、

ニックネームが「高ぁ〜なる」に、変わったのだった。

彼の進める株は高ぁ〜なると、噂が広まったそうだ。


 彼は趣味も多彩だ、

車、AV機器、アマチュア無線、パソコン

特にアニメ、特撮は語り始めたら終わりがないのだ。

ルパン三世マクロスガンダム、ヤマト、宮崎作品、

はては、

サザエさん、メルモちゃんまで、

特撮、ウルトラマンゴジラ仮面ライダーロボコン

マスター梅林も嫌いじゃなく、

朝4時5時まで語り合ったこともある。

しかし、女性にはこれで何度か失敗している。

二人っきりで飲んでいて、酔うにつれアニメを語り始め、

いつの間にか女性が去っていく。

今回もそうだと高鳴さん。

FOU ROSESのロックを舐めながら、

「俺はオタクだぁ、オタクの何が悪いのかなぁ。」

エバンゲリオンを、語ったあとポツリと、

「あの娘アニメ苦手だって。」肩を落としためいきひとつ。



 「マスター、わたし、高鳴さんに誤解されてるみたい」

目に涙いっぱいためて。

アニメ嫌いではなく、少女マンガ好きなんです。

「彼の好きなFOUR ROSES、ロックダブルで」

ゆっくりと一杯、二杯目を手に持ったまま

ポツリと語り始めたのは、

一条ゆかりのデザイナーに始まり里中満知子をへて

少女マンガ特有の長髪の男性や花に囲まれた主人公登場は

和田慎二が最初だとか、手塚治虫だって、石森章太郎だって

赤塚不士夫も少女マンガ描いていたんだヨー!

この娘すごいかも、しかも三十年も四十年も前のだよ。


 マスター梅林の携帯にメールが入った。

偶然なのか、運命なのか、

なんと高鳴さんからだ。

[マスター、またヤケ酒に付き合ってヨ〜。]

[はい、待ってますよ。ムフッ!]と、彼女のことは触れずに返信。



 三杯目は水割りにして、うつむき加減にポツリと。

「マスター、高鳴さんに連絡とれないかなぁ。」・・・と

カウベルがカラ〜ン、「今日もヤケ酒つきあっ・・・アッ!!」

待ってましたよ、と マスター梅林は、

彼女の隣の席にバーボンのロックおいて、静かに席を離れた。

高鳴さん、隣に座りロックグラスを手に取る。

短く、長い沈黙と思えたが、・・・


  二つ離れた席で森耕作さんが

バイクの話をしている、

「刀・1100で北海道に行くから、

梅ちゃんもXV・ビラーゴ750で

一緒に行こうよ」

JIM・BEAM飲みながら誘っている。

「北海道か、いいねェー、行ってみるか」

静かな会話 と、・・・隣の席では、

  「ちば てつや も、少女マンガ描いていたヨ!」

紫電改の鷹だろー、横山光輝がさー・・・」

サリー、コメットさんの・・・、だったら 鉄人28号がー・・・

ヤッターマン吉田竜夫竜の子プロ・・・

  この二人会話、暗号のような不思議な会話。

わかる人には、解るのだろうが。

仲がいいのやら悪いのやら、

愛すべき オタクである。・・・END・・・

 最後まで読んでくれて、ありがとうございます。